貸金返還についてAIに相談してみた(その3)

前回の続きです。
柏木さんが自分で内容証明郵便を送ってみたものの効果がなかったという設定で、次に何をすればいいのかをAIに相談してみました。


AI(Gemini)の回答

柏木さん、それは本当に災難でしたね。善意で貸したお金なのに、相手のSNSでの散財や「もらったものだと思った」なんていう不誠実な対応を見せられると、金額以上の精神的なショックがあると思います。

内容証明を送っても効果がないとなると、相手は「口先だけで逃げ切れる」と高を括っている可能性が高いです。法的に、かつ現実的に回収を目指すなら、以下のようなステップを提案します。

1. 「支払督促」を検討する

内容証明はあくまで「手紙」ですが、支払督促は裁判所から相手に「払いなさい」という書類を送ってもらう手続きです。

  • メリット: 書類審査のみで、裁判所に行かなくて済みます。費用も数千円程度(印紙代など)で済みます。
  • 効果: 相手が受け取ってから2週間以内に異議を申し立てなければ、強制執行(差し押さえ)ができるようになります。
  • 柏木さんへのアドバイス: 相手が「Macを買った」と言っているなら、最悪の場合、そのPCや預金口座を差し押さえるための準備段階として有効です。

2. 「少額訴訟」に踏み切る

60万円以下の金銭トラブルなら、1回の審理で判決が出る少額訴訟が適しています。

  • メリット: 原則1日で終わります。弁護士に頼まず自分一人で行う人も多いです。
  • 証拠の整理: 柏木さんのケースでは「振込履歴」と「来月返すねというLINE」があるとのこと。これは「貸し借り(金銭消費貸借契約)」が成立している一級の証拠になります。相手が「もらったものだ」と主張しても、裁判所ではまず通りません。
  • 心理的プレッシャー: 裁判所から呼び出し状が届くだけで、田狩さんのようなタイプは急に慌てて「分割でいいから払う」と連絡してくることもよくあります。

3. SNSの投稿を保存しておく

田狩さんの「キャンプ」や「Mac購入」の投稿は、スクリーンショットで保存しておいてください。

  • なぜ必要か: 裁判や話し合いの場で「お金がなくて返せない(不能)」という言い逃れを封じ込めるためです。「返済する資力はあるのに、あえて返していない(悪質性)」を裏付ける補足材料になります。

いかがでしょうか。過去2回の記事を見てきてもうお分かりかもしれませんが、提案部分はまだまだですね。

提案内容を簡単に見ていきましょう。


支払督促について

裁判所から書類を送ってもらうという点は事実です。なのである程度のプレッシャーをかけることはできるでしょう。
しかしながら相手方が異議を出したら通常の裁判手続に移行します(民事訴訟法395条)。これ、結構重要なことだと思うのですが、これに関する言及がまったくされていません。
そして管轄裁判所は、通常は相手方の住所地(異議後の管轄について民事訴訟法395条、383条1項)。これから先、裁判手続のデジタル化が進むので、管轄裁判所はそれほど気にしなくてもいいのかもしれません。でももし出頭を求められたとしたら?交通費をかけて遠方の裁判所に行かなくてはならないケースもまったくないとはいえません。


少額訴訟について

1回の審理で判決が出るからお手軽、みたいな文脈で書かれているように感じられます。けれど、1回で終わるということはその1回ですべてを出し切らないといけないということ。早く終わらせられる反面、その1回にかかるプレッシャーは非常に重いものになるかもしれません。
そしてこの手続についても、相手方が「通常訴訟にしてほしい」と言えば通常訴訟になります(民事訴訟法373条1項2項)。


もし私がアドバイスするなら…

今回は「高い勉強代だった」と、ここで収めるのが、最もバランスの良い着地点だと考えます。というのは、必要になる労力やかかるストレスなどが回収できる金額に見合っていないからです。
ただ「どうしても気が済まない」とか、「純粋な好奇心で経験してみたい」という方は、ぜひご自身で裁判手続をしてみてもいいのかもしれません。
この場合は、支払督促以外の手続をおすすめします。できれば少額訴訟ではなく、はじめから通常訴訟で。なぜなら少額訴訟の場合、被告の一存で通常訴訟に移行してしまい、こちらのプランが崩れやすいです。戦うと決めたのであれば、そのような不安定なシステムを利用する理由がありません。覚悟を持って、最初から腰を据えて通常訴訟で戦ってください。
そして裁判手続に使う各種書類・書式テンプレートは裁判所ホームページで探してみてください。もちろんAIに頼めば作ってくれますが、間違いがあったときに取り返しがつきませんので。


補足

ここまで書いた内容だと「踏み倒したもん勝ち」みたいな内容になってしまうので、一応念のため言及しておきます。
勤務先や金融機関の口座等、確実に回収できる差押先がわかっているのであれば、裁判所の手続に要した費用は一緒に回収できます。回収できなかったときは、財産開示手続といったメニューも用意されています。
また、確定判決の時効期間は10年ですので、いま回収できなくてもそれでおしまいというわけではありません。


次回予告

3回にわたり事例から検討するAI相談について書いてきました。
いかがでしたか?
前の記事でも書きましたが、AIにはまだアドバイザーはできないものの、サポートツールにはなることがわかりました。
シリーズ最終回となる次回は、私のAIの使い方などを含めたあとがきのようなものを書く予定です。ご興味のある方はお付き合いください。